ecojin interview
世界が一つになれば
環境問題が前進する日はきっと來る。
田中直樹|NAOKI TANAKA
生き物好きとして知られる、お笑い蕓人の田中直樹さん。
生物多様性に関連したイベントや講演などに參加し、
地球環境のさまざまな現狀を知ったと言います。
そこで気付いた聲を上げることの大切さとは。
「こんなこと無理だ、できっこない」って
地球環境を諦めない
「仕事がうまくいかなくて悩みがちだった若い頃、生き物の姿を通して、食べて、寢て、シンプルに生きられればそれでいいじゃないかと思えて気持ちがとても楽になりました。だから自分で生き物を飼うのではなく、自然界の中でたくましく生きる、生き物のありのままの姿を見たいと思っています」と話す、ココリコの田中直樹さん。だからこそ、環境破壊によってさまざまな生き物の生息環境がおびやかされていることが気がかりだと言います。
2022年12月に國際自然保護連合(IUCN)によって公表された「IUCN絶滅危懼種レッドリスト(絶滅のおそれのある種のリスト)」では、現在、存在が確認されている野生生物約216萬種のうち、約15萬種が評価され、約4萬2000種もの生き物が絶滅の危機に瀕(ひん)していると指摘しています。
「こんなにも多くの野生生物が絶滅の危機に瀕しているのは、人間の活動によって自然界のバランスが大きく崩れてしまったからですよね。自分の體感としても、年々、地球環境が悪い方に変化しているように思います」
環境問題が大きく取り沙汰されるようになって以降、なんとか自然破壊を食い止めようと多くの人たちが動いているにもかかわらず、なかなか「良くなった」という狀況にならないことにジレンマを感じることも。ただその中でひとつの示唆を受けた出來事があったと言います。
「東京大學未來ビジョン研究センター教授で國立環境研究所上級主席研究員の江守正多さんと対談させていただいた時のことです。江守さんが『30年前は建物の中でも外でもたばこを吸っている人がたくさんいて、今のような分煙社會になるなんて誰も想像もしていませんでしたよね?でも多くの人が一斉に聲を上げて足並みをそろえて行動したことで、こんなにも社會は変わりました。環境については問題が大きすぎて太刀打ちできないように思ってしまいがちだけれど、みんなで手を攜えれば社會は一気に変わる』っておっしゃって、なるほど!と思ったんです?!氦长螭胜长葻o理だ、できっこない』って思うことをやめる、そして大切だと思うことに対して聲を上げる、それだけでも大きいことなんだなぁって」
田中さんは今、持続可能な漁業を普及するMSC(海洋管理協議會)のアンバサダーを務めています。MSC「海のエコラベル」は、水産資源と環境に配慮した持続可能な漁業で獲られた水産物だという証しです。過剰な漁獲を防いで水産資源と海の生態系を守ろうとするものですが、MSC「海のエコラベル」の日本での認知度はまだ15%程度(2022年時點)とかなり低いのが現狀です。
「『MSCラベルが付いた商品を売っている店がそばにない』という聲を聞くんですけれど、実はコンビニやファストフードの商品の中にもラベルが付いているものがあるんですよ。日本ではまだラベルを知らない人が多いですけれど、僕ももっと聲を大にして発信して、どんどん広がっていくようにしたいです」
環境問題を諦めないこと、発信し続けることの大切さに気付いた田中さんは、伝え方にも気を配るようになったと言います?,F在、ナショナルジオグラフィックが企業や大學などと連攜して主催しているプロジェクト「ナショジオ オープンキャンパス」のナビゲーターとして活躍する中で、子どもたちが環境問題を自分ごととして捉えられるように気を付けて話すようになったのだそう。
「ホッキョクグマの數が激減しているというニュースを聞いても、『シロクマがいなくなったら、何でこまるの?』と思う子どもたちも當然いるんです。だから『氷の上で狩りをするホッキョクグマは、溫暖化で氷が解けてしまうとエサが獲れなくなって生きられなくなってしまうんだ。同じように、溫暖化によって気溫や海水溫が上昇すれば、日本にだって強い臺風が襲來して作物の収穫にも影響が出るよね。ホッキョクグマと僕たちの暮らしはつながっていて、同じように大変なことになる』、そんなふうに物事はすべてつながっていると伝えるようにしています。そうすると、やっぱり子どもたちの真剣さが変わるように感じます」
いつの日か世界中が手を取り合って環境問題に取り組めれば、その瞬間からガラッと良いスパイラルに入っていくことができるかもしれない。タイミングを逃すことがないように、常に環境問題にアンテナを立てて、自分にできることをポジティブな気持ちでやり続けていく、それが今の田中さんの環境問題に対するスタンス。
「エコな行動を嫌々、我慢しながらやるのではなく、『地球環境が良くなるからやるんだ』というプラス思考で行動したいですね」