これからの暮らし方

 2020年10月、菅総理は所信表明演説の中で、2050年までに溫室効果ガスの実質的排出を日本全體としてゼロにする脫炭素社會の実現を目指す「2050年カーボンニュートラル宣言」を表明しました。これを受けて、國內の企業や自治體などでも脫炭素化の動きが活発化。一つのカギとなるのが、発電時に溫室効果ガスを出さない太陽光、風力、バイオマス発電などの再生可能エネルギーです。
 脫炭素社會を実現するために、世の中の仕組みはどう変わるべきか、私たちはどう動くべきか、一緒に考えてみましょう。

ライフスタイルを見直し、
社會や地域全體で脫炭素化を

 地球溫暖化がもたらす気候変動などの地球環境の危機は、大きくは経済活動や社會システムによって起こると考えられます。その一方で、消費ベースから見た國內におけるCO2などの溫室効果ガス排出量の約6割は、私たちの住まいや食、移動など、家計消費に起因しているといわれています。地球環境は、利便性や快適性を追い求める私たちの日常の生活や消費活動とも密接に関わっているのです。

 今、家計における消費の多くが冷暖房や給湯など、エネルギーに関連することから、溫室効果ガスの排出を抑える再生可能エネルギーに著目する動きが広がりを見せています。また、2050年までにCO2の実質排出ゼロを目指す「ゼロカーボンシテ?!工虮砻鳏工胱灾误wは全國で331(20213月19日現在)にまで拡大し、地域として脫炭素を目指す取り組みも広がっています。

 エネルギーを切り口に、私たちのこれまでのライフスタイルを見直しながら社會や地域全體で脫炭素化に取り組むことが、「カーボンニュートラル」の実現には不可欠なのです。

消費ベースから見た日本國內の溫室効果ガス排出量
食12%、住居17%、移動12%、消費財10%、レジャー5%、サービス%、政府消費10%、固定資本形成(公的)6%、固定資本形成(民間)19%、その他4%。家計消費6割以上。參考:南斉規介「産業連関表による環境負荷原単位データブック」(國立環境研究所提供)、Keisuke Nansai, Jacob Fry, Arunima Malik, Wataru Takayanagi, Naoki Kondo 「Carbon footprint of Japanese health care services from 2011 to 2015」、総務省「平成27年産業連関表」より公益財団法人地球環境戦略機関(IGES)作成より

地域資源を活用した
エネルギーの地産地消を実現

 脫炭素社會の実現には、再生可能エネルギーを活用した持続可能な地域社會の構築が大きく貢獻すると考えられます?!?a title="脫炭素チャレンジカップ2021" >脫炭素チャレンジカップ2021」で環境大臣賞グランプリを受賞した大分県日田市のモリショウグループの拠點は大分県日田市。市の8割が森林におおわれた日田市では古くから林業が盛んでしたが、安価な輸入材に押され、近年は林業の擔い手も減少傾向にありました。

 株式會社モリショウ、木質チップ製造と環境リサイクル機械販売の日本フォレスト株式會社、木質バイオマス発電を行う株式會社グリーン発電大分、地域の公共施設などに電力を供給する日田グリーン電力株式會社からなるモリショウグループは、地域の林業家から購入した間伐材などを活用した木質チップを燃料とするバイオマス発電によってつくりだした電気を市內に供給し、「電力の地産地消」を実現しています。

 この取り組みの根底には、森の恩恵を受けてきた企業として、再び林業を活性化し継続させていきたいとの思いがあったと言います。モリショウグループを例に、地域で広がる脫炭素化の取り組みを見ていきましょう。

森の恵みから生まれる電力を市內に供給

天瀬発電所

 モリショウグループでは、地域の林業家から購入した間伐材などを原料とした木質チップによるバイオマス発電を行う「グリーン発電大分」を平成25年に設立。発電規模は約5,700kw。つくられた電気は「日田グリーン電力」を通じて、日田市內全ての小?中學校や日田市役所といった公共施設などに供給されています。比較的小規模な発電所とはいえ、こうした施設を自然豊かな場所につくるに當たって、地域住民にその意義などを丁寧に説明してきたと言います。

 また、全ての自社工場でもこの電力を使用?;剂悉蚴工铯胜ぐk電方法である「非化石証書」を活用することで、実質再生可能エネルギー100%の電力が供給されていることになります。森林を育むためには定期的な間伐が必要になりますが、使われず森に放置されていた間伐材を購入することで地元林業を活性化させ、同時に電力の自給自足、地産地消を実現しているのです。「再エネによる小規模なシステムで電力の地産地消を行う私たちの取り組みに時代が追いついてきた」とモリショウの森山和浩さんは語ります。

発電所の溫排水を農家で再利用

 バイオマス発電を行う際に発電所から出される溫排水は、近隣のいちご農家のビニールハウスに供給し、再利用されています。従來、ビニールハウスを溫める際には重油を燃やしていたため、特に冬場は燃料費がかさみ、燃やす際には煤(すす)も出ていました。発電所の溫排水を再利用するようになってからは燃料費もかからず煤も出ないため、いちご農家の方たちからも感謝されていると言います。バイオマス発電は、地域の林業だけでなく農業のインフラにも貢獻しているのです。

いちご農家のビニールハウス

地域の林業の安定性と持続性を確立

種苗センター

 バイオマス発電の燃料となるスギやヒノキは、植林してから伐採にいたるまで成育するのに通常50年もの期間が必要となり、「親世代が植えた木を孫世代が伐(き)る」といわれています。また、伐採後も計畫的な植林を行わなければ木材の継続的な確保が困難になります。そこでモリショウグループでは、將來にわたる森林資源確保を見據え、スギなどの種苗を育成する「種苗センター」を開設。スギやヒノキだけでなく、伐期が10年ほどと比較的早く単価が高い早生樹の種苗も育成し、木材の安定供給とともに林業家の安定収入に寄與することを目指しています。こうした取り組みによって、地域の林業の安定性と持続性の確立に貢獻しています。

災害時の復興にも貢獻

 モリショウグループの母體となるモリショウが、木くずなどからチップを作る破砕機などの環境リサイクル機械の販売からスタートしたこともあり、発電所の建設以前から災害発生時に被害木や倒壊した家屋の廃材などを積極的に受け入れてきたと言います?!笧暮Πk生時には地域の行政から真っ先に依頼が來るため、地域の復舊?復興にいち早く貢獻することを優先してきました。企業として目の前の利潤を追求するだけでなく、長期的な視野で將來を見據えながら地域の環境を整え、持続可能性を高めるよう努めています」とモリショウの森山さんは言います。

被害木の受け入れ

電力を供給する地元小?中學生への
環境教育も実施

地元小學校での出張教室

 日田市內の全小?中學校にバイオマス発電による電力を供給していることから、出張教室で模型を使って発電の仕組みを説明するほか、発電所では小?中學校からの施設見學も積極的に受け入れています。子どもたちに、日ごろ自分たちが使っている電気がどうやってつくられているのか、CO2を排出しないバイオマス発電によって電力がつくられる過程を知ってもらう體験出張型學習は環境教育としても有意義です。また、こうした機會を通じて、未來を擔う子どもたちに地域を支えてきた基幹産業である林業にも関心を持ってもらいたいとの狙いもあるそう。子どもたちは楽しみながら発電の仕組みを學んでいると言います。

自治體や関連企業と連攜した森づくり

 モリショウグループは、大分県が進める社會貢獻活動「企業參畫の森林づくり」に參加し、大分県や日田市、また県內?市內のさまざまな関連企業と連攜して森林づくりに攜わっています。また、日本フォレストでは「日本フォレストの森林づくり大會」を主催しており、持続的な植樹や下刈り、間伐などの活動を通して地域資源である「みんなの森」を地域の方々とともに育み、守り続けています。

森林づくり活動

本質的な関心を持つ人が聲を上げ
社會全體で脫炭素社會の議論を

江守正多さん

國立研究開発法人國立環境研究所 地球システム領域 副領域長

江守正多さん

 菅総理の「2050年カーボンニュートラル宣言」について、長年、地球溫暖化の將來予測と気候変動リスクについての研究や提言を行ってきた1人として、日本もついにここまで來たかという感慨とともに受け止めました。金融市場や國際ビジネスを睨(にら)み、世界的な潮流である脫炭素化へと舵を切らなければ乗り遅れるとの危機感も背景にあってのことだと考えられますが、國のトップの宣言によって、企業や自治體の脫炭素化への動きがさらに加速化することは間違いありません。

 脫炭素社會実現のカギとなる再生可能エネルギーも、今後は価格低下や制度整備によって一気に広がりを見せると考えられますが、一方で新たな設備を作ることが自然破壊につながるのではないかと危懼する聲もあります。地域の人々にその意義を丁寧に説明して納得を得ながら、地域のメリットが見える形で再エネ導入が進んでいくことが望ましいでしょう。そうした意味でも、事例で紹介されているモリショウグループの取り組みは、地場産業である林業の再生を軸に持続可能なエネルギーの自給自足を実踐するケースとして先進的なモデルになると考えられます。

 脫炭素社會は、産業界が率先して技術の転換を進めることで実現に近づくかもしれませんが、一般市民の意識が置き去りになったままでは「しあわせな脫炭素社會」が訪れるかは疑わしいです。イギリスやフランスで広まった「気候市民會議」という仕組みがありますが、これは性別や年齢、學歴などが社會の縮図になるよう無作為に抽出された100人程度の一般市民が、専門家からの情報も受けつつ対話的に議論をし、あるべき脫炭素社會の姿を模索、提案していくものです。最近、札幌市でも試験的に実施されましたが、このように市民を巻き込んだ議論によって脫炭素を社會全體で考えていくことが必要だと思います。

 まず、世界で起きている気候危機について知り、なぜ脫炭素化が必要なのか腑(ふ)に落ちることが第一歩です。例えば、発展途上國の人たちが自分たちはCO2をほとんど排出していないにもかかわらず深刻な災害に見舞われる確率が高くなっています。この不公平な構造に対して、それはおかしいと聲を上げる人たちが増えてほしい?!?.5%以上の國民が非暴力の抗議活動を行ったら社會の大きな変化が起こる」というデータがありますが、本質的な関心を持つ3.5%の人たちが立ち上がれば、社會の常識はガラリと変わりうるのです。

ライフスタイルを見つめ直し、
行動を変えよう

 2050年までに脫炭素社會を実現するためには、産業界の新たな動きに注目し、自分たちの住む地域の自治體や行政の取り組みも把握しながら、一人ひとりが「自分ごと」として捉えて積極的に參加していく姿勢が求められます。社會全體が持続可能なシステムへと大きく転換しようとする今、私たちも自分自身のライフスタイルを見つめ直し、行動を変えていくことが必要です。

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